年を越し、長らく時間が空いてしまい、さらにこんな事故についてのブログとなりました。
「豪華客船、沈没」「タイタニックから100年後の13日の金曜日」「船長が先に避難」など
いろんな報道がされました。
亡くなった方のご冥福をお祈りします。不明者の方、事故理由も早くわかりますように。

クルーズ業界も私個人もかなりびっくりした事件でした。
そしてびっくりしたのがコスタ・コンコルディアを「豪華客船」とシャウトする報道、
次にショックを受けたのは「豪華客船での旅をするならある程度のリスクは背負わないと」など
お金持ちを想定した乗客への冷ややかな嫌味、
「救命ボートが錆びていたらしい。クルーも逃げた。片手間の仕事らしい」などの
根も葉もないコメントの数々でした。

そもそも今回の客船は、報道でもあったように、
日本からのツアーが7泊のクルーズと飛行機代込みで18万円から。
クルーズだけなら700ドル(5万6000円)くらいからです。スイートルームでも20万円(1週間ですよ)。
世界に400隻あるといわれる客船の中で、松竹梅なら梅、
ラグジュアリー、プレミアム、カジュアルなら「カジュアル客船」のカテゴリーに
属します。1泊8000円~2万円(食事、エンタ、移動費込み)で
陸のホテルに泊まって旅するよりもかなり安く旅行ができます。
アメリカやヨーロッパでは「安く旅行するならクルーズ」という認識なので
日本の報道とはまったく違う扱いです。

私もコスタ・コンコルディアと同じ形の船、「コスタ・セレーナ」に乗りましたが、
まだ金銭的に余裕がないイタリア人カップルの新婚旅行、
つつましく暮らしているご夫婦の記念日の旅行、
子連れ(子供は同室2人まで無料)のファミリーと実に庶民派クルーズです。
私はイタリア人の大工さんで結婚記念日で乗っているご夫婦によくしていただきました。

もう一つ、誤解で悲しかったのはクルーの避難訓練についてです。
「乗船していた約1000人のクルーのうち、大半がサービスやエンタ担当だった」と
言われていますが、それは事実です。ホテルと同じ機能を持つので
ウエイターや客室係、エンターテイメントにつく仕事のクルーは多いのは当然です。
船の安全を守るのは船長以下航海士や機関士たちがあたります。
(基本的に航海士は少数精鋭のエリートです)

ただ、すべてのクルーは定期的なクルーだけの避難訓練(実際に救命ボートを下して
動くかも確かめます)を行い、乗客との避難訓練のときには全員で誘導を行います。
法の上でこれらの訓練を行っているので、これは紛れもない事実です。

ただ、今回のように船が傾いてしまったために救命ボートが降りてこなかったり、
急な事故のため、パニックになったクルーがいたのも事実でしょう。

私は今まで100隻近い客船やフェリーに乗ってきましたが、
どんなに気候が悪くて揺れたとしても、船を危険だと思ったことはありませんでした。
出航する港にやっとこさ着いて、船に乗ったのに、避難訓練が毎回毎回あるのを
憎々しげに思っていたほどです。

唯一、「海は怖いんだ」と思ったのは南極クルーズでした。
ベテランの船長が天気予報を確認し、南極から南米アルゼンチンへの帰路の
日程を早めて、嵐に追い立てられるように戻った時です。
ドレーク海峡という悪名高き荒れる海峡を揺れながら戻りましたが、
揺れるということよりも、「日程を変更してまで帰路を急ぐ」ということに驚き、
探検船という特殊な船でも自然には対抗できないのだという畏怖を感じたのです。

そのくらい安全性を信じていましたが、
今回、私もクルーズ関係者も教訓を得ました。
経済性を優先して大きな船をすごい勢いで造りすぎたのではないかと。

安いクルーズですから、船をたくさん造り、乗客をたくさん乗せないと
利益はあがりません。また大きければ派手な施設も造れ、PRできます。
船が増える分、船員がどんどん必要になり、
船長を含め、船員の質の低下を招いたのではないかということです。

楽ちんで、快適で、船上で友人もたくさんできるクルーズという旅の形を
日本人の方にもっと知ってほしくて、様々な形で紹介したり、勧めてきました。
まだまだ「高い」「揺れる」「退屈」などたくさんの誤解があるクルーズですが、
少しずつクルーズに参加される人も増えてきたところです。
そんなときに、私たちは安全性などについてももう少し考え、
確かな情報を伝えていく必要があったのではないかと反省しています。

船長の逃亡劇でまだまだネタを提供してくれそうな今回のコンコルディアの
事件ですが、根本的な問題にメスが入れられ、改善し、
そしてまた多くの方が快適にお手頃にクルーズを楽しめる日がやってくることを
望みます。

今回のような事故原因は許されませんが、
歩いていても、車でも、電車でも、飛行機でも事故にはあいます。
船の事故率(助からない率)というのはかなり低いほうです。
そんなこと、ニュースでは誰も言ってくれませんが、
私はこれからも、いろんな客船で旅をしつつ、クルーや乗客、
訪ねた土地の人との出会いを楽しんでいきたいと思います!

そして今までは「楽で便利で楽しい乗り物」でしたが、
海という自然の中で旅をさせてもらっていることを意識し、
安全に航海させてもらえることに感謝し、
海と近い旅をしていることを楽しみたいです。

追記になりますが、コスタ・クルーズはヨーロッパ人の乗客が多く、
船内放送では5カ国語以上の言語で行われます。
イタリア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、英語、そして
他の国からの乗客が多ければ、その国の言語も加わります。
事故時の問題として、英語が母国語でないクルーが多いため
コミュニケーションができず、事故が大事になったり、誘導ができなかったりします。
国際海事法では英語を基本としているので、その指導も厳しくなることでしょう。
乗客も、いろんな国のクルーや乗客と出会えることはすばらしいことですが、
私たちができることとして、万が一のために少しでも緊急用の外国語を
かじっておくのはいいかもしれません。
(私がイタリア語を習い始めたのは、このコスタ・クルーズの船で
イタリア人乗客と意志の疎通ができたらもっと楽しかろうという思いからでした。
全然上達してませんが)

コスタ・クルーズの場合、英語は5番目のアナウンスになるので、
それを待たずに、ほかの言語をキャッチすれば行動は早くなります。
と、これまた自戒を込めた気づきでした。

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